『クリエイティブ・インターベンションズ・ツールキット』翻訳プロジェクトとコンテンツ警告
クリエイティブ・インターベンションズは、暴力の解決策を求める人々の選択肢を広げることが目的の米国発の団体であり、コミュニティです。警察や公的福祉に頼れない状況で起きる暴力も射程に置き、加害者を排除しない方法で、個人やコミュニティが健全に変化を遂げるための手法を分かち合っています。
クリエイティブ・インターベンションズとそのコミュニティによって書かれたのが『クリエイティブ・インターベンションズ・ツールキット:対人暴力を止めるための実践ガイド』です。
私たち&commonsは『クリエイティブ・インターベンションズ・ツールキット』の翻訳プロジェクトを進めています。日本語翻訳版をこのブログで公開していきます。
この本が役に立つ人たち
(『クリエイティブ・インターベンションズ・ツールキット』第1章3節より)
・暴力が起きている状況に関係する人々
・コミュニティのなかのアライ
・害を与える人(加害者)
・暴力に反対する団体
・社会事業団体、信仰に基づく機関/団体/教会など、コミュニティ・センター、政治団体、組合、スポーツ・チーム、学校、保育所、企業などに加え、人々が共に生き、働いたり礼拝したりと何らかの活動に参加するその他の団体
コンテンツ警告
この本では、トラウマやPTSDなどのトリガーとなるコンテンツ(内容)が書かれています。以下の項目に関連する用語が使用されていたり、具体例が掲載されている場合があります。ご自身の体調に合わせて無理なく読み進めてください。
→性差別や性暴力
→ドメスティック・バイオレンス(DV)
→虐待
→人種に基づいた差別や暴力
『クリエイティブ・インターベンションズ・ツールキット』の読み方
この本は説明書のように使用することも予想されています。初めて使う機械の説明書のように、自分に必要な箇所から読むことをお勧めします。
例えば「1.0 はじめに」を読んでから「1.3 ファシリテーターの役割」のページを読み、「1.8 対人暴力に対するコミュニティ・ベースの介入とは何ですか?」を読むなどです。
原著、他言語訳版のご紹介
日本語翻訳版はできた順に掲載していきますが、&commonsメンバーたちが素人ながら自分たちの学びも兼ねて少人数のチームで挑戦していることから、ゆっくりの更新になると思います。原版の英語とスペイン語訳版が無料で全文PDFにてダウンロードできますので、気になる方はぜひ読んでみてください。ちなみに英語は、移民や英語が第一言語ではない人やコミュニティを想定して書かれているので比較的シンプルで読みやすいです。
ダウンロードはこちらから。
https://www.creative-interventions.org/toolkit/
展望
ひとまずはブログで翻訳を公開していきますが、PDFでダウンロードしやすい形で発表したり、先々はZINEなどの手に取れる媒体を作っていきたいと考えています。
また、クリエイティブ・インターベンションズのウェブサイトでも日本語翻訳版が掲載される予定です。
どうぞ楽しみにお待ちください!翻訳がんばります~!
お問い合わせは&commonsの公式メールまで and.commons@gmail.com
『クリエイティブ・インターベンションズ・ツールキット』1.8_4このツールキットについてのよくある質問
1.8は長いので、7本の記事に分けてお届けします。
この記事は1.8_4で、このセクションは1.8_7まで続きます。
今回はQ11~Q12の翻訳をご紹介します。
コンテンツ警告
この本では、トラウマやPTSDなどのトリガーとなるコンテンツ(内容)が書かれています。以下の項目に関連する用語が使用されていたり、具体例が掲載されている場合があります。ご自身の体調に合わせて無理なく読み進めてください。
→ドメスティック・バイオレンス(DV)
→虐待
→性暴力
Q11:私は暴力の被害者であり、このツールキットにあるような支援を心から受けたいと思っています。でも頼れる人がいないんです。私を支えてくれる人が誰も思い浮かばないんです。
地域に根差した支援の形が誰しもの手に届くものではないことは事実です。米国内の多くのコミュニティにおいて人々は、ホットラインや、シェルター、カウンセリング*1
、医療センター、そして刑事司法制度の対応など、手に届く範囲の支援に頼る必要があるかもしれません。
それと同時に、より地域に根差した考え方を持ち始めると、可能性が開くのを私たちは見てきました。人々を潜在的なアライとして見れるようになり、思いもしなかったところでアライを見つけられる可能性があるのです。あなたは長期でチームに関わってくれる人を見つけられないかもしれません。しかし、短期だったり小さかったりしても、個人が価値ある役割を担ってくれる可能性があります。私たちが自分たちのことをクリエイティブ・インターベンションズ(創造的な介入)と呼ぶのは、まさに創造性こそが多くの場合必要なものだからです。決まったレシピはありませんが、創造性、柔軟性、そしてこのツールキットのような情報源から得られる小さな助けが、なんらかのかたちで介入を可能にしてくれるでしょう。それらは少なくとも目標の一部を達成する手助けとなるでしょう。
第4章C節「アライと障壁をマッピングする」は、誰が助けとなるか、そして協力者がどんな役割ができるかについてのアイデアを引き出す助けになります。
Q12:私はアライとしてアカウンタビリティのプロセスに参加していますが、時々、暴力のサバイバーに対して否定的な感情を抱いている自分に気づくことがあります。正直なところ、私はサバイバーより、害を与える人のほうに好感を持ってしまっているのです。これは普通のことですか?
暴力のサバイバーに対して私たちが嫌悪感を抱くのはあり得ることです。サバイバーたちも完璧な人間ではありません。彼らは他のみんなと同じように不完全なのです。私たちは時として彼らが「完璧な被害者」であることを想定してしまいます。つまり罪悪感に打ち勝ち、言ったことを必ず実行し、私たちが助けたときに感謝してくれるというような人たちです。
ときどき、私たちが怒ってしまうのは、彼らが害を与える人に対して複雑な心境を抱えているので、その人たちを恐れたり擁護したりと、行ったり来たりしているように見えるからです。そしてアライにとっては何をすればいいのか判断しにくくなるからです。虐待があった場合の影響と介入の難しさによって、暴力を経験してきた人はおびえたり、怒ったり、ガッカリしたり、イラついたり、疲れたり、混乱したりすることがあります。そしてそれは周囲の私たちに不愉快なものに映ることがあるのです。
危害を加える人は時によって、その人の魅力や権力、能力などの力を利用して彼らの虐待的な言動を隠したり正当化したりしようとします。
DVや性暴力といった対人暴力によくある力関係についてより理解を深めることは大切です。そうすることによって、サバイバーや害を与える人が持つ一見すると不可解な態度や行動をよくあることとしてみることができるからです。これはアライがしばしば感じる混乱を説明する助けにもなるでしょう。そして、害を与える人に対する私たちの気持ちを説明する手助けにもなります。暴力に対処し、減らし、終わらせまたは未然に防ぐために適切な行いとは、必ずしも私たちがサバイバーを「好き」であったり、害を与える人を「憎んだり/嫌ったり」することではありません。大切なのはゴールを明確にしたり、暴力と暴力への介入に関する、複雑な力関係を理解する手助けをしたりするものだということです。
第2章2節「対人暴力:みんなが知っておくべき基礎知識」では、このような複雑な感情について更に多くの情報や支援を知ることができます。こうした感情は自然なものです。しかし、私たちがサバイバーを疑ったり、害を与える人の側に立ってしまうような方向に、私たちの判断を誤らせることがあります。
第2章3節「暴力への介入:大事な教訓」に、介入の力関係についての詳しい情報があります。
第4章E節「サバイバーや被害者を支援する」に、様々な条件下でサバイバーを支援するための詳しい情報があります。
第4章F節「アカウンタビリティをを全うする」に、様々な条件下で害を与えた人がアカウンタビリティを果たすための支援について、詳しい情報があります。
訳注1:Counseling Centers
日本とアメリカではカウセリングの保険適用や手法など多くの部分で異なります。
日本よりもアメリカの方が、カウンセリングに対して敷居が低いようです。一つ目のリンクはプロへ助けを求めるときの文化的な違いについて、アジア系およびアジア系アメリカ人と、ヨーロッパ系アメリカ人の間で調査している論文です。
アートセラピーという手法も取られています。2つ目のリンクは米国のアートセラピーの団体です。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3576055/
(2025年3月30日閲覧)
『クリエイティブ・インターベンションズ・ツールキット』1.8_4このツールキットについてのよくある質問
1.8は長いので、7本の記事に分けてお届けします。
この記事は1.8_4で、このセクションは1.8_7まで続きます。
今回はQ11~Q12の翻訳をご紹介します。
コンテンツ警告
この本では、トラウマやPTSDなどのトリガーとなるコンテンツ(内容)が書かれています。以下の項目に関連する用語が使用されていたり、具体例が掲載されている場合があります。ご自身の体調に合わせて無理なく読み進めてください。
→ドメスティック・バイオレンス(DV)
→虐待
→性暴力
Q11:私は暴力の被害者であり、このツールキットにあるような支援を心から受けたいと思っています。でも頼れる人がいないんです。私を支えてくれる人が誰も思い浮かばないんです。
地域に根差した支援の形が誰しもの手に届くものではないことは事実です。米国内の多くのコミュニティにおいて人々は、ホットラインや、シェルター、カウンセリング*1
、医療センター、そして刑事司法制度の対応など、手に届く範囲の支援に頼る必要があるかもしれません。
それと同時に、より地域に根差した考え方を持ち始めると、可能性が開くのを私たちは見てきました。人々を潜在的なアライとして見れるようになり、思いもしなかったところでアライを見つけられる可能性があるのです。あなたは長期でチームに関わってくれる人を見つけられないかもしれません。しかし、短期だったり小さかったりしても、個人が価値ある役割を担ってくれる可能性があります。私たちが自分たちのことをクリエイティブ・インターベンションズ(創造的な介入)と呼ぶのは、まさに創造性こそが多くの場合必要なものだからです。決まったレシピはありませんが、創造性、柔軟性、そしてこのツールキットのような情報源から得られる小さな助けが、なんらかのかたちで介入を可能にしてくれるでしょう。それらは少なくとも目標の一部を達成する手助けとなるでしょう。
第4章C節「アライと障壁をマッピングする」は、誰が助けとなるか、そして協力者がどんな役割ができるかについてのアイデアを引き出す助けになります。
Q12:私はアライとしてアカウンタビリティのプロセスに参加していますが、時々、暴力のサバイバーに対して否定的な感情を抱いている自分に気づくことがあります。正直なところ、私はサバイバーより、害を与える人のほうに好感を持ってしまっているのです。これは普通のことですか?
暴力のサバイバーに対して私たちが嫌悪感を抱くのはあり得ることです。サバイバーたちも完璧な人間ではありません。彼らは他のみんなと同じように不完全なのです。私たちは時として彼らが「完璧な被害者」であることを想定してしまいます。つまり罪悪感に打ち勝ち、言ったことを必ず実行し、私たちが助けたときに感謝してくれるというような人たちです。
ときどき、私たちが怒ってしまうのは、彼らが害を与える人に対して複雑な心境を抱えているので、その人たちを恐れたり擁護したりと、行ったり来たりしているように見えるからです。そしてアライにとっては何をすればいいのか判断しにくくなるからです。虐待があった場合の影響と介入の難しさによって、暴力を経験してきた人はおびえたり、怒ったり、ガッカリしたり、イラついたり、疲れたり、混乱したりすることがあります。そしてそれは周囲の私たちに不愉快なものに映ることがあるのです。
危害を加える人は時によって、その人の魅力や権力、能力などの力を利用して彼らの虐待的な言動を隠したり正当化したりしようとします。
DVや性暴力といった対人暴力によくある力関係についてより理解を深めることは大切です。そうすることによって、サバイバーや害を与える人が持つ一見すると不可解な態度や行動をよくあることとしてみることができるからです。これはアライがしばしば感じる混乱を説明する助けにもなるでしょう。そして、害を与える人に対する私たちの気持ちを説明する手助けにもなります。暴力に対処し、減らし、終わらせまたは未然に防ぐために適切な行いとは、必ずしも私たちがサバイバーを「好き」であったり、害を与える人を「憎んだり/嫌ったり」することではありません。大切なのはゴールを明確にしたり、暴力と暴力への介入に関する、複雑な力関係を理解する手助けをしたりするものだということです。
第2章2節「対人暴力:みんなが知っておくべき基礎知識」では、このような複雑な感情について更に多くの情報や支援を知ることができます。こうした感情は自然なものです。しかし、私たちがサバイバーを疑ったり、害を与える人の側に立ってしまうような方向に、私たちの判断を誤らせることがあります。
第2章3節「暴力への介入:大事な教訓」に、介入の力関係についての詳しい情報があります。
第4章E節「サバイバーや被害者を支援する」に、様々な条件下でサバイバーを支援するための詳しい情報があります。
第4章F節「アカウンタビリティをを全うする」に、様々な条件下で害を与えた人がアカウンタビリティを果たすための支援について、詳しい情報があります。
訳注1:Counseling Centers
日本とアメリカではカウセリングの保険適用や手法など多くの部分で異なります。
日本よりもアメリカの方が、カウンセリングに対して敷居が低いようです。一つ目のリンクはプロへ助けを求めるときの文化的な違いについて、アジア系およびアジア系アメリカ人と、ヨーロッパ系アメリカ人の間で調査している論文です。
アートセラピーという手法も取られています。2つ目のリンクは米国のアートセラピーの団体です。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3576055/
(2025年3月30日閲覧)
『クリエイティブ・インターベンションズ・ツールキット』1.8_3このツールキットについてのよくある質問
1.8は長いので、7本の記事に分けてお届けします。
この記事は1.8_3で、このセクションは1.8_7まで続きます。
今回はQ8~Q10の翻訳をご紹介します。
コンテンツ警告
この本では、トラウマやPTSDなどのトリガーとなるコンテンツ(内容)が書かれています。以下の項目に関連する用語が使用されていたり、具体例が掲載されている場合があります。ご自身の体調に合わせて無理なく読み進めてください。
→ドメスティック・バイオレンス(DV)
→虐待
Q8:私の知っている状況のひとつに、このアプローチは適していると思います。しかしファシリテーターが必要だと感じています。ファシリテーターはどうやって見つければいいでしょうか?このようなことができる専門家はいるのでしょうか?また、お金を払う必要がありますか?
現時点では、実際にこのような種類の暴力への介入アプローチに精通している、もしくはこのアプローチを使って支援する準備ができている団体や「専門家」はほとんどいません。私たちが信じているのは、多くの人の身近には、信頼関係のある人や繋がりのある誰かがいて、その人たちがこのツールキットのようなリソースの助けを借りれば、ファシリテーターとしてかなり良い働きをしてくれるということです。彼らはすでに私たちのことを知っているかもしれないし、私たちの文化や言葉になじみがあるかもしれないし、よい結果を望んでくれるかもしれません。このアプローチのなかでは、ファシリテーターは決定を下しませんし、すべてを知っているわけでもありません。ファシリテーターとは、複雑で感情的かつ長期に渡る可能性のあるプロセスの、重しになるような人です。ファシリテーターは質問する手助けをしたり、このツールキットや他のリソースがどこで役立つのかを確認したり、私たちがすでに決めたことを思い出す手助けをしてくれるのです。もしくは、もし私たちがファシリテーターを見つけることができない時は、このツールキットが、コミュニティを基礎とした介入をリードし、組織し、参加する助けになってくれるでしょう。
時間とともに私たちはコミュニティのなかの人が、ファシリテーターやアライなどの役割ができるように、もっと技術を磨いていくことを期待しています。ここでいうコミュニティのなかの人とは、「頼りになる人」、「根っからの助っ人」、信仰指導者、ご近所関係で頼りにされている人、家族の頼れる人、今までリーダーになったことはないけれどもこういうことが得意な人などです。「暴力を終わらせることを日常で使える共通のスキルにする」というのは、私たちのモットーのひとつとしてありつづけてきました。暴力を終わらせ、未然に防ぐことに助力したいという望みと欲求、そして能力は、私たちすべてが持っています。そして将来的には私たちが自分たちのコミュニティと子どもたちに教えることができるものであり、日常的に取り組むことができると期待しています。
第4節「ファシリテーターのためのヒント」で、このツールキットによるあなたのプロセスの多様な要素をどのようにファシリテートするのかについての具体的な提案をご覧ください。
Q9:このツールキットはすごく長いです。専門的な知識のない多くの人がこれを読めるでしょうか?
おっしゃるとおり、このツールキットはとても長いです。暴力への介入は、残念ながら、料理のレシピのように書けたり、10個の簡単なステップに単純化することができないのです。このツールキットは、安全性、ゴールの設定、意思疎通、十分な協働といった、暴力へ介入する多様な状況下における懸念事項を取り入れることを試みています。この本に載っている私たちの経験は、多種多様な暴力の状況があり、実に様々な人々が暴力への介入に関わることになり、本当にたくさんの予想外のことが起きうるということを私たちに明らかにさせました。その起きうるであろう状況を含めて私たちができる最善のことをしたかったのです。私たちはまた、危険な状況に対応することになることと、よくあることとして被害に対処し終わらせるための行動をとると危険が増幅するということを認識しています。
害を加える人たちは、挑発されたり、パワーバランスに変化があるとき、時として脅されているように感じたり、支配感覚が奪われたりしていると感じることさえあります。このような場合、時には危険と不確実性が高まる時期を招く可能性があります。こんな状態になる恐れがあるから私たちは行動しないほうがいいということを言いたいのではありません。私たちはこの状況の解決に向けて更に念入りに備えて、予防措置を確実にする必要があります。ここでの情報の多くやこれらのツールは安全とリスクを考慮しながら行動することに導きます。
このツールキットの文書形式と長さは多くの人にとってアクセス可能なものではないと私たちは理解しています。一般的になじみのない用語を説明するため、そして哲学的な議論や政治的な議論よりも実践のステップに集中できるように言葉をシンプルにしようと努めました。この本を読む人や、パソコンから読む人が、この知識を学んだり理解したりする方法学んだり理解したりする方法が異なる人々の手に届くものになるようにしてくれることを私たちは望んでいます。また人々が、簡単に使うことができ、理解できるようにこのツールキットに付け足し、新しいツールを作ったり、この本のウェブサイトやその他のやり方で、他者とシェアしてくれることを私たちは期待しています。
私たちはまた、人々が危険に陥ったときや、愛する人たちが傷つけられたり他者を傷つけたときに、このツールキットがより強力な意味あるものになることを期待しています。
人々がその個別の状況やニーズに対処するための一節を見つけてホッとすることを私たちは望んでいます。この本全部が必要ではないかもしれませんが、読者自身を支え目標に向かうための役立つ情報を十分に見つけられるでしょう。
Q10:このツールキットは、介入をとても長くて複雑に感じさせますに感じさせます。自分がどのようにこれを引き受けられるのかわかりません。
この本は、沢山の人が関与する場合の介入や、害を与えている人に変化を促す長期的なプロセスを含むように作られています。この前提にあるのは、暴力のパターンが何度も長い時間をかけて、何世代にもわたって築き上げられた態度や行動の結果であるという考えです。従ってこれは、一つの出来事や行動では変わりにくいでしょう。
私たちはまた、小さな行動も重要なステップであると理解しています。たった一人にでも、勇気を出して暴力の状況を話すことが、とてつもなく大きな一歩となるでしょう。自宅に友人を呼び、シェルターのように安全と安心を提供してもらうことは、害を加えている人を変えることにはならないかもしれません。しかし、被害者とその子どもたちにとって安全で癒される環境を提供できるでしょう。誰かの家から安全に銃や武器を取り除くことは、家庭内暴力の典型的な流れを止めることはできないかもしれませんが、深刻あるいは致命的な被害を大幅に減らすことができます。小さな行動が、孤独感、屈辱、恐れを打破するかもしれません。こうした行動は、害を加えている人に対して、人々に見張られていて、サバイバーと連帯しているというメッセージを伝えられるかもしれません。みんなが害を加えている人のことも気にかけ、彼らが大きく変化するためのサポートをすることができるでしょう。
『クリエイティブ・インターベンションズ・ツールキット』1.8_2このツールキットについてのよくある質問
1.8は長いので、7本の記事に分けてお届けします。
この記事は1.8_1で、このセクションは1.8_7まで続きます。
今回はQ4~Q7の翻訳をご紹介します。
コンテンツ警告
この本では、トラウマやPTSDなどのトリガーとなるコンテンツ(内容)が書かれています。以下の項目に関連する用語が使用されていたり、具体例が掲載されている場合があります。ご自身の体調に合わせて無理なく読み進めてください。
→性差別や性暴力
→ドメスティック・バイオレンス(DV)
→虐待
→子どもの虐待
→女性に対する暴力
→経済的虐待
Q4: なぜ "害を与える人"のような言葉を使うのですか?虐待する人や強姦者と言った方が簡単ではないですか?
このツールキットのなかで私たちは、犯人、違反者、虐待者、家庭内暴力の加害者、強姦者、弱みに付け込んで他人を利用する人、犯罪者、などに加え、これに類する言葉で、加害を行った人に対してそのレッテルを永久に貼るような言葉から距離を取っています。私たちはまた刑事司法制度で使われる言葉からも距離をとっています。私たちが目指すのは刑事司法とは異なったアプローチだからです。このツールキットは、これまで誰かに害を与えたことのある人々の態度や行動の変化を含む変革を後押ししています。そのため、私たちの言葉は変革の可能性を反映したものであってほしいのです。
より深い言葉の定義を知るために、第5章1節「キーワードとその定義」を見てみましょう。
Q5: コミュニティのアカウンタビリティとは、私には私刑や自警主義*1のように見えます。これはあなたたちが意図していることですか?
この本の考え方では、コレクティブやグループの人々がアカウンタビリティのプロセスに関与することはあっても、以下のことを意図した暴力行為を認めません。それは「罰、復讐、報復、同じ思いをさせるため、痛みを感じさせるために傷つけること」です。私たちの目的は、害を与えている人に対し、共感やつながりに基づいた、暴力に対するアプローチと介入の方法を提示することにあります。ここでは害を与えている人をアカウンタビリティのプロセスへと参加するよう、招き入れます。そしてその過程が、最終的には彼ら自身だけでなく、コミュニティに属する他の人々にとっても利益があると理解してもらうことを目指しています。「招待」のイメージは、私たちのアプローチを方向付けています。暴力を止め、被害に対処する初期段階では、たとえ穏やかな形であっても、ある程度の力を行使する必要が生じる場合があります。私たちは、このような圧力を、加害を続けている人に対して、私たちが持つ力や影響力を「活かしながら働きかける」ひとつの手段として考えることもできます。
詳細な情報については、第4章F節「アカウンタビリティをを全うする」
をご覧ください。
Q6:私は被害を受けました。そして私にとってのアカウンタビリティとは、この人に自分がしたことをたくさん後悔させることです。コミュニティのアカウンタビリティは、害を与えている人に対して、自分がしたことを後悔させるために使うことはできないのでしょうか?
申し訳ないと思ったり、後悔を感じたり、恥を感じたりすることは、誰かが自分の有害な態度や行動に責任を持つようになるにつれ、自然に抱く感情かもしれません。しかし、これは私たちが罰や恥ずかしめ、苦痛を与えて後悔するように「確実」に申し訳ないと思ってもらうこととは異なります。私たちの社会では、誰かを後悔させることと、効果的に対処して暴力を停止させるプロセスを作ることの違いを教えられていません。アカウンタビリティと復讐はしばしば混同されます。正義を求めることと報復も混同されます。復讐への欲望はよく理解できるものですが、私たちは人々にこれらの感情を認め、一歩引いて考えるように求めています。また、復讐を支持しない一連の価値観も私たちのコミュニティ対応の基礎としています。
第3章4節「あなたの介入を進める価値観」を読んでみましょう。この節は、価値観を明確にするための議論とツールが書かれています。
第4章D節「ゴールを定める」には、介入とコミュニティのアカウンタビリティの過程における目標を考える際のより多くのサポートについて書かれています。
Q7:クライシスライン*2やシェルター*3、警察など、こういった事に対処する機関はないのですか?なぜあなたたちは人々に関与するように求めるのですか?危険ではありませんか?
私たちが気づいたことと言えば、傷つけられた人々がいちばん初めに頼るのは、多くの場合家族や友達だということです。大抵、最後の手段としてクライシスラインやシェルター、または警察を頼るのです。または、何も頼ることをしないかもしれません。一部の人々、たとえば、無登録移民*4の人たち、既に法的なトラブルを抱えている人たち、または既に警察のターゲットにされている人たち、このような人々にとっては警察に助けを求めようという気持ちにはならないでしょう。
暴力を認識し、減らし、終わらせ、また防ぐこと(それは私たちが「暴力への介入」と呼ぶものです)についての知識や技術を増やし、みんながもっと良い働きができると信じています。もし私たちがコミュニティのメンバーとして、暴力へ効果的に介入できるとしたら、それが深刻になるまで、あるいは被害が大きくなりすぎる前に、すぐ対処できるようになる可能性があります。その時ケアと思いやり(共感)をもって近しい他者に対して行動できるはずです。愛する人たちや分かりあえる人たち、コミュニティを共有できる人たちを、私たちはもっとすばやく手助けすることができる立場にあります。そして、何も起きていないように振る舞ったり、被害者を責めたり、他の誰かがなにかしてくれると望んだりもせず、被害に対して直接、そして断固として対処できるのです。自分たちが生きていきたいと思える健全な場所、すなわち、自分たちの居場所や家族、コミュニティを作ることができるでしょう。
私たちはまた、このような未来を望んでいます。それはアプローチがもっと知られて、このツールキットのような資源が手に届くようになることです。そして、それに応じて、クライシスラインやシェルター注が、暴力が自分たちの家族やコミュニティで起きたときに、私たちのような自分たちで暴力に対処する行動をしたい人たちに、さらなる支援をも提供できるようになることです。第4章-B節「安全を確保する:安全と危険についての懸念に対処する」を参照してください。
訳注1:
自警主義、ヴィジランティズム
◆不可算◆警察に頼らずに自らの手で法を執行しようとする考え方。(出典:英辞郎”vigilantism” )
(2025年11月23日閲覧)
訳注2:
クライシスライン
アメリカでのクライシスラインは突然の強い不安や危険を感じたときに、誰でも24時間相談できる窓口です。自殺念慮、精神的な混乱、依存問題、急な喪失など、家族や友人には話しにくい深刻な悩みに、訓練を受けた相談員が対応します。必要に応じて、警察や救急への連携や、現地での支援チーム派遣も行い、安全の確保をサポートします。
公的なものと非営利/地域団体による支援があります。https://highlandhosp.com/whats-the-difference-between-a-crisis-line-and-a-warmline/
(2025年11月27日閲覧)
訳注3:
シェルター
暴力から逃れた人が、安心して過ごせる一時避難の住まいです。共同生活型や個室型があり、専門スタッフが生活再建のサポートをします。
シェルターでできること・受けられる支援
数週間から数か月のあいだ、一時的に生活できる安全な宿泊場所が確保される
専門スタッフが常駐し、新しい生活に向けた手続きや支援(住居探し、法的相談、子どものサポートなど)をしてくれる
同じ経験を持つ人と安心して過ごせる、落ち着いた環境
安全のため、場所は非公開で、持ち込める荷物も最小限です。まずは安全な家族・友人宅など、他の選択肢も含めて相談員が一緒に考えてくれます。
日本の女性のためのシェルターは全国女性シェルターネットを参照してください。
https://nwsnet.or.jp/
(2025年11月27日閲覧)
訳注4:
無登録移民
在留資格をもたない移民を指す際、日本において従来用いられてきた「不法移民」「不法滞在者」といった表現は、人の存在そのものを「不法」と形容する点で正確さを欠くとされています。
正規の在留資格を持たずに日本へ滞在することは、行政法の範疇に属する入管法違反という行為・状態を指すものであり、「移民という人の存在そのもの」が刑事的な意味で「不法」であるかのように扱われることは適切ではありません。
このような背景から、1975年の国連総会決議以降、国際的には人の存在を犯罪性と結びつけない表現として、“irregular”(非正規)や “undocumented”(無登録・未登録、書類のない)といった語が一般的に用いられています。
https://migrants.jp/news/others/230601.html
(2025年11月27日閲覧)
『クリエイティブ・インターベンションズ・ツールキット』1.8_1 このツールキットについてのよくある質問
1.8は長いので、7本の記事に分けてお届けします。
この記事は1.8_1で、このセクションは1.8_7まで続きます。
今回はQ1~Q3の翻訳をご紹介します。
コンテンツ警告
この本では、トラウマやPTSDなどのトリガーとなるコンテンツ(内容)が書かれています。以下の項目に関連する用語が使用されていたり、具体例が掲載されている場合があります。ご自身の体調に合わせて無理なく読み進めてください。
→性差別や性暴力
→ドメスティック・バイオレンス(DV)
→虐待
→子どもの虐待
→高齢者の虐待
→女性に対する暴力
→経済的虐待
1.8_1 このツールキットについてのよくある質問
ここでは、このツールキットについてと、暴力に介入するためのコミュニティを基盤とした手法についてのよくある質問を紹介します。以下をご覧いただくと、あなたが抱いたものと同じ質問が見つかるかもしれませんし、これらの質問があなたをこのツールキットの要点へと導く手助けになるかもしれません。各質問の後に、短い回答と、さらに読むべきおすすめの章を記載しています。
Q1. 対人暴力とは何ですか?
私たちは対人暴力を、人間関係のなかで起こる暴力の類型であると定義しています。これには以下のようなものが含まれます。
- ドメスティック・バイオレンス(DV)もしくは、デートDV、親密な関係や婚姻関係、事実婚、交際関係や、元恋人や元配偶者などといった関係性において起きる暴力。
- 家族内暴力。親密なパートナー間でのDVを含みうるものです。しかし、子ども、両親、孫、祖父母、その他の親族や、また他の近しい人々、たとえば家族の友人、後見人、介護者/介助者なども含まれます。
- 性暴力。望ましくない性的なふるまい*1、接触や行動(性暴力、レイプ、セクシャルハラスメント、子どもへの性虐待など)。
- 児童虐待。子どもに対して行われる全ての種類の暴力。
- 高齢者虐待。高齢者に対して行われる全ての種類の暴力。
- 上記に挙げた以外の暴力の種類についてももちろんCIは重点的に取り組んでいますが、このツールキットは、近隣地域やご近所づきあい、学校、各種団体、職場、そして雇用関係など、他の状況下での暴力を経験している人びとにも役に立ちます。こういったかたちでの暴力もまた人間関係によるものだと考えられます。
暴力は身体的、精神的、性的、経済的、またその他のかたちをとります。
第2章2節「対人暴力:みんなが知っておくべき基礎知識」をチェックしてみてください。
Q2: 対人暴力に対するコミュニティを基盤とした介入とは何ですか?
端的に言えば、CIが定義した暴力に対するコミュニティを基盤とした介入とは、
- 対人暴力に対処し、減らし、終わらせ、また予防しようと努めることであり(もしくは、私たちはそれを介入を呼びます)
- 警察や社会福祉事業に頼るよりも、コミュニティの持つ資源を使うものであり、
- 友人や、家族、同僚、ご近所さん、もしくはコミュニティのメンバーを直接巻き込むものであり(私たちがコミュニティと呼ぶもの)、
- 害を与える人や人々に直接対処する(あるいは関わりあう)可能性のあるものです。
第2章1節「対人暴力に対するコミュニティを基盤とした介入とは?」と、第3章1節「モデルの概要:このモデルはあなたに合うものでしょうか?」により詳しい情報があるので、読んでみてください。
Q3:アカウンタビリティとはどういう意味ですか?
簡単に言えば、アカウンタビリティとは、暴力を認識し、終わらせ、問題などが発生したときに、その責任が自分にあることを認め、状況の説明、原因の究明など、事後の対応など対策を取る責任を引き受ける力のことです。私たちは大抵、暴力の責任は加害をする人にあると考えます。コミュニティのアカウンタビリティは、コミュニティが暴力を無視したり、軽視したり、時には助長したりすることについて責任があるということをも意味します。コミュニティもまた、暴力を認識し、終わらせ、責任を引き受けなければなりません。それは、暴力に対して介入するために、さらに知識を深め、技術を身につけて、暴力を未然に防ぐ社会の規範や状況を支えるための行動を起こすことです。
アカウンタビリティはひとつの過程です。そこには聞くこと、学ぶこと、責任を引き受け、変化することが含まれています。安全と敬意、幸福を目指して、私たちの家族やコミュニティのうちに直接的な対話、被害を理解し修復すること、エンパワーメントと権力の平等な分配のための再調整、関係性とコミュニティの再構築の機会を意識的に作り出すことが含まれています。
クリエイティブ・インターベンションズでは、アカウンタビリティについてこれまでとは異なる考え方を推進しています。私たちが掲げるのは、より積極的で、責任と変化に結びつきながらも、罰や復讐には結びつかず、恐怖や怒りだけでなくつながりとケアによっても動かされる可能性があるビジョンです。これは、暴力や虐待が恐怖、怒り、憤りを引き起こす事実を否定するものではありません。それらの感情は存在します。そして、そうした感情が存在するべき場面もあります。
しかし暴力が共感、安全、敬意、心身の健康へと変わっていくためには、その変化は、私たちが実現したいと願う価値観にも基づいている必要があります。それは私たちが暴力に直面しているときには、そう感じるのがけ難しいかもしれません。そして、私たちはアカウンタビリティを、罰し、引き離し、追放するための手段ではなく、コミュニティを維持し、安全で健康的なものに保つための方法として推進しています。
これは、サバイバーや被害者が加害者を赦す必要があるとか、単に謝罪を求めればすべてが解決するとか、親戚や家族は一緒にいなければいけないという意味では決してありません。赦すことや謝罪、関係を続けることは、一部の人々が望むかもしれず、また実現の可能性があることかもしれませんが、これらはいずれもアカウンタビリティの定義には当てはまりません。
アカウンタビリティはひとつの過程です。私たちは、アカウンタビリティを変化への階段のように捉えています。私たちはこの階段を使って、アカウンタビリティに向かうステップと積極的で変革的な変化のビジョンを示していますが、介入はこれらのステップのいずれにも到達しない可能性があります。介入のめやすとしては、以下に書いてあるStep1に到達すること自体がゴールだと予想される場合もあります。

アカウンタビリティの階段
6 コミュニティの健全な一員になる
5 暴力を繰り返さないために、有害な態度や行動を改める
4 与えた害を修復する
3 たとえ意図的でなかったとしても、言い訳せずに暴力の結果を認識する
2 暴力を暴力として認識する
1 目の前の暴力を止める
*1:訳注:
「Associations between Cues of Sexual Desire and Sexual Attitudes in Portuguese Women」
「性的態度(Sexual attitudes)とは、個人が性や性的行動に対して持つ態度のことを指します[13,14]。これらの態度は、家族や文化的な性に関する観点、性教育、および過去の性的経験の影響を受け、個人の性的行動に現れます。」(下記の本文から抄訳しています。)
Sexual attitudes refer to the attitudes one has toward sexuality or sexual behaviours [13,14]. These attitudes, manifested in a person’s individual sexual behaviour, are influenced by family and cultural perspectives about sexuality, by sexual education, and by prior sexual experiences [15].
この文における "unwanted sexual attitudes"(望ましくない性的な態度) とは、相手の同意を無視したり、性的な不快感を与えたりするような考え方や振る舞いを指します。これは直接的な身体的接触を伴わない場合もあり、次のようなものが含まれます。
性的な発言やコメント(例:「性的な冗談」や「見た目に関する不適切な発言」)
性的な視線やジェスチャー(例:「じろじろ見つめる」「いやらしい仕草をする」)
性的な価値観の押しつけ(例:「性的役割を強制する」「性的関心を持つべきと圧力をかける」)
性的な環境の強要(例:「ポルノや性的なコンテンツを見せる」「性的な話題に無理やり巻き込む」)
これらの態度は、被害者に心理的・精神的な苦痛を与え、性的暴力の一環とみなされることがあります。
「Unwanted sexual behaviour: what can you do?」
https://www.ugent.be/student/en/study-support/trustpunt/unwanted-sexual-behaviour
(2025年4月29日閲覧)
「被害にあったと感じたときにできること:
- 自分の境界線をはっきりと伝える。
「私は、この行動をやめてほしいです。」と伝える - 安全な場所へ移動する。
友人、家族、警察署、病院、あるいは自分が安全だと感じる場所にできるだけ早く向かってください。」(下記の本文から抄訳しています。)
What can you do yourself?
Were you too surprised or shocked at the time to respond? Know that it is never too late to intervene, even as a witness. Maybe you doubt whether the other really went too far. Also in that case: don't get stuck with it. As soon as you didn't feel comfortable, it helps to talk about what happened. You can do this when you feel like a victim:
- Clearly define your boundaries. You do that with an assertive I message, such as: "I want you to stop this behavior." Not sure how to best approach this? Trustpunt helps you with this.
- Get yourself to safety. Go to a friend, family member, police station, hospital, or any other place where you feel safe as soon as possible.
『クリエイティブ・インターベンションズ・ツールキット』1.7. 進行中のものとしてのツールキット
コンテンツ警告
この本では、トラウマやPTSDなどのトリガーとなるコンテンツ(内容)が書かれています。以下の項目に関連する用語が使用されていたり、具体例が掲載されている場合があります。ご自身の体調に合わせて無理なく読み進めてください。
→性差別や性暴力
→ドメスティック・バイオレンス(DV)
1.7. 進行中のものとしてのツールキット
ツールキットはガイドであり、保証書ではない
このツールキットは、私たちを常にいちばん望ましいゴールへと導くものではありません。その一方でどのように暴力に対応したいかや、健全なコミュニティ像へ向かってどのように動いていきたいかを想像するのをお手伝いします。コミュニティを基盤とした暴力から離れていく変化の可能性を高めるのに役立つでしょう。しかし、これは約束できるものではありません。
本書はコミュニティを基盤とし、直接的に暴力を変革する可能性を高めることを助けますが、その変革を保証するものではありません。介入を最後まで進めるために必要な時間やエネルギーなどのリソースを十分に確保できない人もいるかもしれません。
協力してくれる人のグループを見つけることができないかもしれませんし、あなたのグループは十分に協働できないかもしれません。このアプローチが自分にとって有効だと考えるには、あまりにも多くのリスクや危険が伴うかもしれません。より伝統的なDVや性暴力に対応している団体が提供する、手に届く範囲のアプローチを使おうと決めることになるかもしれません。しかし、コミュニティを基盤としたアプローチを熟慮し配慮したプロセス自体が、他の人々にとって状況に対する理解を明確にする手助けになります。そして、将来暴力に遭遇したときのために予防対策をしたり、より良い備えをするための動機づけになるでしょう。
目標と成功の定義を変える
このツールキットには、暴力に対処し、減らし、終わらせ、また予防しようとする誰にとっても有用な情報が書かれています。しかし、私たちはまた、このような暴力への介入が、難しく予想できないプロセスであるとも理解しています。成功とは、私たちが定めた目標をすべて達成する、という意味ではないはずです。このツールキットを使って、選択肢を検討したり、当初の目標をすべて達成せずにプロセスの一部を進めたりすることもできます。プロセスのどの部分を達成しようと努力することも有用なことであり、価値のあることです。私たちは自身の取り組みを通して、成功は予期せぬ形で現れるものだと学んできました。
あなたと私たちの経験、すべてを通してツールキットを改善すること
このツールキットは進行中のものです。CIが「ストーリーテリング&オーガナイジング・プロジェクト」[Story Telling & Organizing Project](www. stopviolenceeveryday.org)*1と「コミュニティを基盤とした介入のプロジェクト」[Community-Based Interventions Project] (www.creative-interventions.org)を作り上げる数年間で集めることができた最良の情報が書かれています。私たちCIもまた始まりに立ったに過ぎないのです。
このツールキットの各章を読み、あなたにとって役に立つかどうか確かめてみてください。もしあなたがこれを読んでいるならば、言語の問題や、読書に苦手意識があったり、または精神的危機にあって、このツールキットを活用しづらい人をどう助けることができるか考えてみてください。私たちは、この情報、ツール、教訓を多くの人が利用しやすい形で提供できる方法を見つける取り組みに貢献してほしいのです。
最後に、あなたがもしこのツールキットをあなた自身の介入に使う際には、経験と学びとった教訓はどのようにこの本に追記できてて、ツールキットををよりよいものにできるかを考えてください。
多くの人がこのツールキットを手に取り手に取り、使い始めるとき、新しい教訓が得られ、新しいツールが生みだされるでしょう。そして、新しい成功談や失敗談が、暴力を終わらせるための知識が私たちの間で共有されることを期待しています。
もしあなたが役にたつ知識、教訓、ツールを生み出したなら、私達のウェブサイト(www.creative-interventions.org、もしくはwww.stopviolenceeveryday.org)、または他の公に開かれた知識が共有できる場所*2で、その知識を他者に提供してほしいです。
*1:訳注:「ストーリーテリング&オーガナイジング・プロジェクト」[Story Telling & Organizing Project](www. stopviolenceeveryday.org)
訳注:公に開かれた知識が共有できる場所はパブリック・フォーラムとも言われます。https://www.merriam-webster.com/legal/public%20forum
国内外の例をいくつか紹介します。
https://peoplesforum.org/
https://chosen-family-shobaracfs.webnode.jp/
https://www.instagram.com/inkiqueerzine/
*2:訳注:
本書は2012年に発行されたものです。2006年から2010年がプロジェクトの最も活発な時期でした。
https://www.creative-interventions.org/about-ci/
『クリエイティブ・インターベンションズ・ツールキット』1.5. 私たちのより大きなビジョンは何でしょう?
コンテンツ警告
この本では、トラウマやPTSDなどのトリガーとなるコンテンツ(内容)が書かれています。以下の項目に関連する用語が使用されていたり、具体例が掲載されている場合があります。ご自身の体調に合わせて無理なく読み進めてください。
→性差別や性暴力
→ドメスティック・バイオレンス(DV)
→虐待
→人種に基づいた差別
→精神疾患と障害者差別
1.5. 私たちのより大きなビジョンは何でしょう?
Our goal is not ending violence. It is liberation.
-Beth Richie私たちの目標は暴力を終わらせることではない。解放である。
ベス・リチー
このツールキットはビジョンと実践を、具体的なツールを伴った実践的なモデルとしてまとめたものです。このツールキットが暴力に対処し、減らし、終わらせ、また予防する方法を検討し、実行する助けになることを私たちは望んでいます。
私たちのビジョンは以下の前提に基づいています。
1. あなたの最も身近な人たちが助けになる ―友人、家族、ご近所さん、同僚、コミュニティの仲間たち
このモデルは、社会福祉事業や、緊急センター*1や警察に頼るものではありません。これらの形式の支援と並行して利用することもできますが、もしあなたがこのような種類の支援を利用しない、もしくは安全だと感じないのであれば、それらを利用することなく支援を行うことも可能です。このツールキットを助けとして、専門的な支援事業や警察よりも、より迅速で安全で効果的な対応を生み出すことができるかもしれません。
2. 暴力を受けている人たちは、その人間関係やコミュニティに留まる必要がある、もしくは留まり続けたいと思っている場合があることを認識すること
ドメスティック・バイオレンス(DV)被害支援事業、性暴力被害支援事業等、ほとんどの場所では、虐待を受けている人は彼らを虐待をしている人から離れるべきだということを前提にしています。そのような場所は、暴力をふるった人々と離れる、逮捕する、接近禁止命令を出すなどして、引き離すべきだと考えているかもしれません。もしあなたが暴力を止めたいけれど、同時に同じコミュニティや同じ人間関係に留まる必要がある、もしくは留まりたいと思っている場合、主流の事業を頼るとこうした選択肢を検討することは難しくなります。このツールキットはあなたを他の可能性へと導く手助けができるでしょう。
3. コミュニティによる対応に頼ること
暴力に関する支援をしているほとんどの場所は通常、刑事司法制度と連携して運営されています。そのような場所では、それがどんなに望まれていないか、もっと言えば害を及ぼす可能性もあることを考えずに、習慣的に911*2に電話するように言うことがあります。逮捕される危険性*3を負いたくない人もいるでしょう。接近禁止命令*4に頼りたくない人だっているかもしれません。接近禁止令というのは通常、お互いの距離を離れさせたり一緒に住むのをやめさせるものです。あるいは、警察が強制送還*5へと対応を一変するかもしれないという恐怖を抱いている非正規移民の人もいるかもしれません。また、人種や国籍、宗教や在留資格、性的指向やジェンダーアイデンティティ(性同一性)*6によって、警察の支援の対象ではなく、警察による暴力の標的として脆弱性が高くなっている人たちもいるでしょう。警察が状況を好転させるのではなく悪化させるのではないかと恐れる理由は他にもあるでしょう。
4. 人々が、安全、支援、変革に向かって準備し、そして行動するのを助ける
このツールキットは暴力から離れての安全、支援、変革という目標に向かって行動すること、もしくは少なくとも、行動について考えることを重視しています。またその行動には、即時的なもの、長期的でたくさんの段階があるものもなどがあります。どんな小さな行動でも変化をもたらすことができるのです。大切なことは、自分たち自身の人生をよりコントロールし、自分にとっても他者にとっても健康的で前向きな意思決定をできるようになることです。このような小さな積み重ねが全て一歩一歩、安全へと向かう選択肢を増やし、そしてより深い変化や変革の可能性へと繋がっていくのです。
時に複雑な変化と変革への道のりを支援するために、団結する方法を深く考えましょう。暴力に変化を及ぼし、暴力から回復し、そして暴力から解放された新しい道を生み出すには時間がかかります。このツールキットは人びとが回復と変革の困難な過程を乗り越えるのを導く助けとなります。
サバイバーもしくは被害者にとって、介入とは、被害を受けたサバイバーや被害者を支援する最良の方法を熟慮できるかどうかにかかっています。その最良の方法とは、暴力に対処し、減らし、終わらせ、また予防することの責任を分かち合うこと(孤立を打破し、アカウンタビリティを果たすこと)、サバイバーや被害者の選択を責めないこと(被害者を非難しないこと)、そして、彼らが自分で定義したニーズと望みに向けた支援を提供すること(自己決定を支持すること)です。
害を与える人に対しては、介入は次のような最善の方法を彼ら自身が熟慮することに基づいています。害を与える人が自分が行っている暴力に気づき、終わらせ、そして責任を取ること(私たちはこれもアカウンタビリティと呼びます)、弁解や正当化を許すことなく(共謀・加担しないこと)、そして彼らの人間性を否定しないこと(悪魔化しないこと)を介入は支援します。
5. 自己決定、健全性、持続性を目指して長期的なコミュニティを構築する
このツールキットは、暴力が起きているそれぞれの状況に対して、実践的で実用的な対処をとることを目的としています。しかしより大きなビジョンとしては、自己決定がさらにできる、より健全で持続可能なコミュニティを目指しています。
この新しい手法、技術や姿勢が、コミュニティを基盤とした日常的な暴力への対応の一部となるにつれて、私たちは対人暴力による破壊に抵抗する自分たち自身のコミュニティの能力を強化することができます。そうすることで自分たちのコレクティブ*7のエネルギーを、より大きな自己決定と全員のウェルビーイング*8のために使えるようになるでしょう。
*1:訳注:緊急センター
原文の表記はcrisis centers。
翻訳チームも作業を通して初めて存在を知り、簡単にですが調べました。
【米国の場合】
米国では緊急センターとは、メンタルヘルスケア専門の緊急外来や、ホットライン、チャットサービス、ショートメールサービスのことを指し、一般に知られる緊急外来(ER)とは異なった組織やサービスです。運営は病院、自治体、第3セクターなどそれぞれ。24時間対応であることが多いようです。病院施設や宿泊施設などを伴う緊急外来はある地域とない地域がありますが、メンタルヘルスや行動健康の多様な専門家が勤めています。一般的な緊急外来(ER)で働く医療スタッフたちの全員が精神医療のトレーニングを受けているわけではないため、適切な個別対応が受けられない可能性があります。
ちなみに米国では毎年500万人が精神的な健康問題や、依存症やストレスによる危機的状況、生活習慣病などを含む行動健康問題で緊急外来を訪れている状況があります。
ドメスティック・バイオレンス(DV)専用のホットラインなどもあるようです。
Youtube動画、「緊急センターとは何ですか?(元タイトル:What is a Crisis Center?)」(英語ですが、調べた中ではこれが一番わかりやすいと思いました。自動字幕をつけるのもおすすめします)
https://www.youtube.com/watch?v=vkq75454Mlg
【日本の場合】
『クリエイティブ・インターベンションズ』原文では、非正規移民をはじめとして、支援者たちが差別的に扱う可能性のあるアイデンティティ(人種、宗教、国籍、ジェンダー・アイデンティティ、など)を持っている暴力の被害者たちのことを念頭に置き、既存の支援サービスに頼ることが難しい状況が説明なされています。場合によっては、頼らないほうがよい、というような記述もあります。しかし、ピンチの際に頼れる先が必要な人もいると思いますし、選択肢や知識は持っているほうがいいと思いますので、日本の情報を以下に少し共有したいと思います。
日本には、いのちの電話などのホットライン、精神科救急、精神科救急病院などが類似のサービスとしてあります。ちなみに、仕組みなどが違うようなのでCrisis Centerは「緊急センター」と訳しました。
まもろうよこころ(厚生省)
ホットラインやショートメールでコンタクトできるホットライン。フリーダイヤルのところも掲載されていました。
https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/
神奈川精神医療人権センター
全国の患者にあった心療内科や精神科の案内や、今の状況の対処方法の相談できる電話窓口。手紙や面会、メールでの相談もできます。実際に利用した方から聞いたところによると、例えば退職者に対して、自立支援、失業保険、傷病手当などに関する情報を具体的に教えてくれます。また、今かかっている病院を変えたいという相談もできるそうです。そのとき対応してくれた臨床心理士の国家資格を持つカウンセラーだったようです。
精神科救急について
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-08-001.html
*2:訳注:911
(emergency telephone number)は、アメリカ合衆国などで用いられている緊急通報番号で、救急車、警察署、消防署に電話するときの共通の電話番号です。日本の110番(警察)や119番(消防や救急)に相当します。
*3:訳注:逮捕される危険性
アメリカの非営利団体であるDesigning Justice + Designing Spacesの取り組みを見ると、逮捕される危険性が社会の中にある背景には、人種差別、貧困、リソースへのアクセスの不平等があることが分かります。
https://designingjustice.org/about/#mission (最終確認日2025年1月8日)
「この団体は、建築を通して、刑事司法制度によって引き起こされる大量投獄や人種差別、貧困、リソースへのアクセスの不平等に対抗する団体です。
裁判所、刑務所、拘置所といった従来の敵対的で懲罰的な司法制度に対抗し、修復的司法、コミュニティ構築、刑務所から出てきた人々の住居のための空間と建物を創り出すことを行っています。」(下記の本文から抄訳しています。)
“We are an architecture and design firm, real estate development firm, and non-profit working to end mass incarceration. Our mission and vision is to use architecture to address the racism, poverty, and unequal access to resources caused by the criminal legal system itself. Our work counters the traditional adversarial and punitive architecture of justice—courthouses, prisons, and jails—by creating spaces and buildings for restorative justice, community building, and housing for people coming out of incarceration.”
– Mission & Vision, About DJDs
ウェブサイトではこの団体が行ってきたシェルターの開発やまちづくり、教育などの報告も載っています。
*4:訳注:接近禁止令
restraining orders
アメリカの場合、州によって違いはありますが、すべての保護命令法では、裁判官が以下の条項の 1 つ以上を命令することを認めています。
虐待をやめる、近づかない、接触禁止、養育費と住宅ローンの支払い義務 、独占禁止、賠償金、銃火器を手放す、治療、監護権、面会、養育費と安全な面会などがあるようです。
下記のページが参考になります。
https://www.womenslaw.org/laws/general/restraining-orders#node-74174
日本国内の保護命令については熊本地方裁判所のページがわかりやすいです。
https://www.courts.go.jp/kumamoto/saiban/tetuzuki/haigusyaboryokuhogo/index.html
*5:訳注:強制送還
日本国内でも、難民受け入れの少なさに対して強制送還される人の多さや、厳しい収容制度など、問題が多くあります。
入管に収容されている人たち、難民申請を希望する人たちを支援している大阪の団体、Save Immigrants Osakaの発信内容に、ご興味のある方は目を向けてみてください。
https://x.com/saveimmigrantso
https://www.facebook.com/saveimmigrantsOsaka/
また、田舎にも外国からの難民の方は住んでいます。都市部や牛久や大阪など入管があるところ以外でも宗教施設やNGOを頼りにあるいは頼りがなく日本で生活している人がいます。就労ビザがないと日本では仕事をすることができないため困窮してしまい、国外に出たものの困っている人が多いです。治安を問題視するデマもありますが、法制度によって、働くという安定して暮らす権利がないために問題が起こっているということもあります。
*6:訳注:ジェンダーアイデンティティ(性同一性)
ジェンダーアイデンティティという言葉の使い方については以下を参考にしました。
「なお、本書では「ジェンダーアイデンティティ」という言葉を一貫して使用しますが、これは英語の「gender identity」のカタカナ表記です。この言葉の約語としては、「性自認」や「性同一性」という言葉も広く定着しており、法律や条例では「性自認」が使用されることが多いです。しかし、「自認」という表現では「本人が一時的に自称しているだけ」のニュアンスを読み取って誤解を招くとの指摘があったり、アイデンティティの安定性という側面が「性自認」では表現できなかったりするなどの理由から、「性同一性」という訳語が好まれることがあります。」
(周司あきら、高井ゆと里『トランスジェンダー入門』、集英社、2023年、17−18ページ)
*7:訳注:コレクティブ
「collective energies」は辞書的には「集団的なエネルギー」と訳せますが、ここでは「コレクティブのエネルギー」と表現しました。collectiveは「集団的な」「集合的な」「共同の」といった意味を持ちます。しかし「1つ以上の問題意識や関心事を共有し、あるいはそれに動機づけられ、共通の目的を達成するために協力し合うグループ」を指すこともあります。単に人々の集まりを意味するものではないと解釈したので、この表現を使いました。
1.2「対人暴力に対するコミュニティを基盤とした・ベースの介入:はじめに」の中にある「コレクティブである。」の箇所もご参照下さい。
*8:訳注:ウェルビーイング
OECDの調査によると
未来の主要指標として、自然資本、社会関係資本、経済資本、人的資本、生物多様性、政治における男女平等、家計債務、若者の教育水準が指標になります。
https://www.oecd.org/en/publications/how-s-life-2024_90ba854a-en/full-report.html